辨 |
ワスレナグサ属 Myosotis(勿忘草 wùwàngcăo 屬) には、北半球の温帯に約80-100種がある。
ノハラワスレナグサ M. alpestris(高山勿忘草・勿忘草) ピレネー・アルプス・アペニン・英国産
ノハラムラサキ M. arvensis(野勿忘草) 北アフリカ・歐洲・カフカス・シベリア・ヒマラヤ産
イヌハナイバナ M. bothriospermoides(承德勿忘草) 河北産
ハマワスレナグサ M. discolor(M.versicolor) ヨーロッパ・西アジア原産
タビラコモドキ M. laxa(原濕地勿忘草)
ナヨナヨワスレナグサ subsp. baltica(M.baltica)
タビラコモドキ subsp. caespitosa(M.caespitosa)
シンワスレナグサ(ワスレナグサ) M. scorpioides(M.palustris;
沼澤勿忘草;E.True forget-me-not)
コリンワスレナグサ f. gracilis
エゾムラサキ(オカワスレナグサ) M.sylvatica(M.sachalinensis;
森林勿忘草;E.Woodland forget-me-not)
|
園芸品のワスレナグサは、本種及びエゾムラサキ M. sylvatica から交雑改良されたもの、あるいはノハラワスレナグサ M. alpestris にごく近いものである、という。 |
ムラサキ科 Boraginaceae(紫草 zĭcăo 科)については、ムラサキ科を見よ。 |
訓 |
ワスレナグサも勿忘草も、英名の訳。
なお、この草は ヨーロッパ各国でも「私を忘れないで」の意味の名を持つ。上記した英語のほか、ドイツ語で Vergiss-mein-nicht、イタリア語で
Non-ti-scordar-di-me。 |
説 |
歐洲・西アジア・シベリア・モンゴル産。 |
日本では、第二次世界大戦後、北海道・長野県に逸出帰化。 |
誌 |
プラーテン(1796-1835)の詩に、「ドナウの川辺で若者が恋人のため珍しい花を摘みとったとたんに足をすべらし,川に落ち急流に流され,いまわの際に〈僕のことを忘れないで〉といった。残された少女は,若者の墓にその花を植え,彼の最期の言葉を花の名にしたという」(世界大百科事典)。
日本では、
ながれのきしのひともとは、
みそらのいろのみづあさぎ、
なみ、ことごとく、くちづけし
はた、ことごとく、わすれゆく。
(ヰルヘルム・アレント「わすれなぐさ」、上田敏『海潮音』) |
仏蘭西のみやび少女がさしかざす勿忘草の空いろの花
(北原白秋『桐の花』1913) |
あら草のかげにうもれて
あえかにもほのかなからに
おほぞらの色にあやかる
いみじさを誰かは忘る
佐藤春夫「忘れなぐさ」(1945,『佐久の草笛』所収)
|
水浅葱色 |
|
|
空色 |
|
小生の耳には、むかしフェルッチョ・タリアヴィーニ(1913-1995)が主演・熱唱した映画『忘れな草 Vergiss mein nicht』(1959)の主題歌が、未だに焼きついています。
|